最近増えてきた「技能実習生」と呼ばれる外国人。技能実習生はベトナム国籍の方が最も多く、さらにその数も年々増加しています。そんな中、技能実習生のベトナム人が職場を放棄して逃げてしまった、なんてニュースを聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。
実は技能実習生の中で最も職場放棄者が多いのは(そもそもベトナム国籍の技能実習生が多いこともありますが)ベトナム人と言われており、毎年約1万人が失踪してしまうというデータもあります。
「ベトナム人は礼儀がなっていない」「不真面目だ」と解釈されかねない事案ですが、果たして本当に彼ら彼女らに問題があるのでしょうか?
今回は、ベトナム人の技能実習生の職場放棄が多い理由とその改善策を徹底解説します。
そもそも技能実習生とは?
技能実習生とは、母国では習得が困難な技術や知識を習得してもらう「技能実習制度」で来日した外国人のことです。技能実習制度には、技能実習生に日本での経験を活かして母国の経済発展に努めてもらう趣旨があります。
技能実習生として日本に行きたいベトナム人は、まずベトナムの「送り出し機関」と呼ばれる機関に所属します。送り出し機関は、日本語や日本文化の教育や、出国手続きの代行をしてくれます。
半年から1年ほど送り出し機関に所属した後、日本の「協同組合」と呼ばれる仲介業者のもとで約1ヶ月間の研修を経た後、受け入れ先企業に配属されます。
なお、技能実習生の労働期間は最長で5年まで認められています。
ベトナム人技能実習生の実態とは?
前章のとおり、スキル習得と母国の発展に寄与できる技能実習生には一見してメリットばかりに思えます。
しかし、技能実習生を取り巻く環境や実態は決して良いとは言い切れないのが現状であり、そのような中で職場放棄をしてしまうベトナム人がいらっしゃいます。
何故ベトナム人の技能実習生の職場放棄が後を絶たないのでしょうか。それには技能実習生だけでなく、協同組合および受け入れ先企業の問題も密接に絡んでいると考えられています。
技能実習生側の問題点
技能実習生の問題点として、大きく3つ挙げられます。
一つ目は、お金目当てで来日している技能実習生が多いことです。
本来、技術や知識の提供を大目標とする技能実習制度を、あくまで自分や家族を助けるためのお金稼ぎの手段として考える技能実習生が多く、結果として労働意欲の低下を引き起こしているのです。
二つ目は、配属先の受け入れ先企業について自己学習が足りていないケースが多いことです。
技能実習生の中には、送り出し機関や協同組合から提供された情報を鵜呑みにし、受け入れ先企業の社風や待遇などをほとんど自習しない方がいます。その結果、描いていた理想の環境とのギャップに苦しんでしまうのです。
三つ目は、日本語学習が不十分なことです。
日本語でのコミュニケーション力があまり高くない技能実習生が、職場および生活に支障をきたしてしまい、嫌気がさしてしまうケースが見られます。送り出し機関それぞれの日本語教育の力の入れ方も様々で、日本語理解が未熟なまま来日してしまう技能実習生もいるのです。
協同組合および受け入れ先企業側の問題点
協同組合および受け入れ先企業の問題点として、大きく2つ挙げられます。
一つ目は、技能実習生を日本人の働き手不足の穴埋めとして登用することです。
多くの技能実習生は、農業や工場・とび職などの肉体労働や、介護職などの日本人の働き手が少ない業種の穴埋めとして起用されることが多いです。特別な技術や知識が身につく環境とは言いがたい上にきつい仕事を強いられることで、労働意欲の低下を引き起こしているのです。
二つ目は、技能実習生への待遇の悪さです。
もちろん全ての組合や企業がそうとは限りませんが、暴力やパワハラ・セクハラ、最低賃金を下回る給与水準など、法を逸脱した劣悪な環境を強いる組合や企業があるのも事実です。
ベトナム人技能実習生が職場で健全に過ごすために
前章の通り、ベトナム人技能実習生の職場放棄は、実習生側と協同組合・受け入れ先企業側双方に解決すべき問題があります。
真面目で精神的にもタフなベトナム人技能実習生に活躍してもらうことで、各受け入れ先企業が人材難から解放されることはもちろん日本の国力向上にも繋がると考えられます。
では、ベトナム人技能実習生が職場で楽しく生き生きと過ごすために、誰がどのようなことを心がければ良いのでしょうか。技能実習生本人と協同組合・受け入れ先企業それぞれの改善策についてまとめました。
技能実習生の改善策
まず第一に、技能実習生は来日前はもちろん日本にいる間も常に日本語の勉強を怠らないことが大事です。
日本にいる以上、職場でもプライベートでも日本語でのコミュニケーションを求められるため、日本語を上手に使いこなすことでトラブルを回避しやすくなるでしょう。加えて、日本語が上手な人材はベトナムで重宝されるため、帰国後に良い仕事に就きやすくなります。
また日本語学習と同時に、受け入れ先企業についての学習もすべきです。
それでも困ったことがあれば、直ぐに職場放棄をするのではなく、信頼できる人に相談してみましょう。来日した外国人の補助を行ってくれるJITCO(国際人材協力機構)にお話ししてみるのも良いと思います。
協同組合および受け入れ先企業の改善策
技能実習制度には構造上の問題が多く、一組合や一企業での改善取り組みには限度があります。しかしながら、技能実習生に待遇などを納得してもらった上で受け入れる姿勢を持つことを忘れてはいけません。
そのため、協同組合および受け入れ先企業は、技能実習生に対してとにかく嘘偽りない情報を提供することが大事です。また、自社のことをより深く知ってもらうために、個別説明会などの広報活動に注力することも良いでしょう。
また、ベトナム人を1人の人間として尊重することも大切です。もし自分が異国の地でとんでもなくすさんだ労働環境に身を置いたらどう思うか、常々考えるようにしてみて下さい。
まとめ
ベトナム人技能実習生の職場放棄が多い理由は、技能実習生側、協同組合および受け入れ先企業側双方にあると考えられます。
技能実習生側の問題点として、労働をお金第一で考えていること、配属先企業についての勉強が不十分なこと、日本語学習が不十分なことが挙げられます。
一方、協同組合および受け入れ先企業の問題点として、技能実習生を働き手不足の穴埋めとして登用すること、暴力やセクハラなど法を逸脱した劣悪な環境を強いることが挙げられます。
改善策として、技能実習生は日本語と受け入れ先企業についての勉強を怠らず、困ったら第三者に相談することが求められます。協同組合および受け入れ先企業は技能実習生に待遇などを納得してもらうために、嘘偽りない情報を提供することが求められます。
日本人の働き手不足が顕在化する中、真面目で精神的にもタフなベトナム人技能実習生と良い関係を築くことで各受け入れ先企業が人材難から解放されることはもちろん日本の国力向上にも繋がります。
ベトナムと日本ともに助け合いながら発展していける世の中になることを、管理人は心から願っています。
コメント
おはようございます。
ちょっとお邪魔しました。
私の職業は道路舗装関係です。
現場を請け負う業者には、沢山のベトナム人がいます。
私の見る限り、みんなまじめで一生懸命に働いてます。
リーダー格に育った人も何人か見てきました。
片言の日本語ですが私には伝わります。
同僚の輪の中に入っていて、いつも心の中で応援しています。
私はタイを見てきた事もあって、
彼らの頑張りに親近感を持っている一人です。
コメントいただきありがとうございます。
私はベトナムに留学経験があり、多くのベトナム人技能実習生と関わってきました。
多くの技能実習生は本国にいる家族をなんとか支えたいという強い思いで日本にやってきます。
しかし、ベトナムと日本では働き方に大きな差異があり、日本での仕事になかなか馴染めない技能実習生も一定数いるのが現状です。
技能実習生の日本語レベルはお世辞にも高いとは言えないため、悩みを相談する相手すらいないようです。
ベトナム人から、「日本人はフレンドリーではない。」「日本人は冷たい。」といった話をよく聞きます。
日本人の少し内向的な性格をそう捉えられてしまっているのかもしれません。
よって、ベトナム人は日本人に話しかけることを躊躇しているようです。
日本人から技能実習生に対して積極的に声をかけてあげることが重要かもしれませんね。
長々と失礼いたしました。
今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。